覚醒 IN ジャピトス。


 ――思えば、あの時ほど初対面の人と話すことを奇妙に感じたことは無かったワケで。

 目が覚めたばかりの頃の私の状態と言うのは、それはもう酷い状態。
 実際、生きている気があの時ほどしなかったことは後にも先にも無い。


 襲い来た飢餓。
 飢餓来襲。
 来襲飢餓。

 言い方は何でも言い訳だけど、とにかく空腹。本当に満腹率0パーセントで、いやもう、お腹の中に何も入っていやがりませんのよ。身体はやたら濡れてるのに喉自体はカラカラだったりしたし。後に同じような目に何度も遭うことになるんだけど、塩水に浸かったらちょうどそんな気分になれること請け合い。是非お試しを。
 空腹に塩水。キツ過ぎるぜ!

 そんな中、まさに死にかけていた私に気づけをしてくれた少年がおりましたとさ。

 少年の名はエオン。後に、しばらく旅路を共にすることになる少年なのだけど、その時はそんな予感、まるで無かったわけで。いや、世の中分からないもんだね。
 何しろこの少年、礼儀の「れ」の字も知りやがらないワケで。

「おっさん、おきろー。このままだと黒焦げだぞー?」

 キタコレ。
 第一声がコレですよ。初対面の人間をおっさん呼ばわり。酷いと思うだろ? まあその、あのまま気を喪ってたら砂漠のど真ん中で太陽に照らされてそのまま干乾びて人生、完、だったワケだから、勿論お礼を言いましたとも。エエ、内心にある憤懣やるかたない気持ちなどそっと胸の奥底にしまってね。

 で。

 色々な人と出会いましたが、何故かそこは、初対面なのに何故か見知った人、見慣れた風景ばかり。
 先方が「はじめまして」とご挨拶下さるからその通り返していましたら、まあ違和感があることあること。

 後に、これの疑問はある国での出会いで晴らされるわけだけど、とにかく、小腹をエオン少年らの支援によって満たした後の私は、とにかく世の中の神様であるお金を稼ぐため、ただひとつの財産である大剣を以ってアトゥラティ神殿地方にある地下遺跡群を図書館の資料から調べだしては盗掘して売り払い、それを元手にジャピトスを後にしたのでした。 

 ジャピトスのみなさん、ごめんなさい。

 あとそうそう。初対面なのにえらく横柄な態度で応対してごめんなさい。
 すごく緊張してたんですよ、マジで。それで、つい、何だか言葉遣いやら色々変な感じになってしまったとゆーか。
 こっちのこれがね、実は素、素なんですよ。

 なんって言うんだっけ、こういうの。最近の流行りの言葉で――?


 えーと、『ツンデレ?』


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