別離 IN エレジタット


「何でも、エラい王様の遺体があるそうで」
 ――ということで、ジャピトスで図書館の本を読み散らかした知識で私は、エオン少年とエレジタットに向かいましたとさ。えーと、確かジオスとか言う悪い王様の遺体、だったかな。

 国境沿いのワルタッタとか言うところで出会ったさる好事家の御仁より依頼を密かに承り。一緒についてきてくれるというエオン少年に依頼自体は黙ったままいざ行かん、と向かったのは良かったのだけれど――。

 悪いことはできないもの。カムリアにある魔の森で迷ってしまったわけで。もう、どっちに向かってんだかも分からない始末。

『迷ったらとりあえず、そこから動かないことだ』

 なんて先人の知恵もそこでは全くの役立たず。動かなかったらそのままそこで飢えて死ぬ! みたいに誰もまるで通りやがらない場所でした。少なくともそこは。

 で。

 途中でエオン少年ともはぐれてしまい、魔物に襲われたりして使い慣れない大剣を振り回してなんとか撃退してりして――結果、買い込んだ食糧も何もかもを使い果たし、森を抜けて光のある世界に抜けたのはそれからえーと、一週間くらい後だったと今となっては記憶。
 気付けばゴルデンもベルヌーブも抜け、見事、目的地のエレジタットについてましたとさ。
 
 とにかく暗いの、そこ。
 さすが闇と共に育ってきた国。暗いのに農業がやたらと発達してる国で、とても驚いた記憶があるなぁ。太陽と農業はセットだと思っていたけれど、あの国は例外だった。

 あくまで、私が見たところ、だったけど。

 アレは名産なのかなぁ?

 やたらともやしを栽培してる農家があったのだけど。
 しばらく『もやし国エレジタット』とかいう風に覚えてて、後で聞いたら綺麗な優しげにサド顔で微笑む闇エルフさんが女王様だったとか。

 エレジタットの皆さん、もやし国なんて思っててごめんなさい。豆もやしの豆は大豆なんですよとか思ってて本当に申し訳なかったと思ってたり。ごめんなさい。
 あと、そうだ。エオン少年とはぐれてまで探しに行ったエラく悪い王様の死体は見つかりませんでした。どこにあったんだろうね?

 とりあえず、盗もうとしてごめんなさい。

 


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