クロスロード IN サンライオ(前編)


 昔の人は良いことを言った。
 
 「出会いは、別れのはじめ」、と言うのだ、と。

 今でも夢に見る女が俺には居て、その女のことが今でも忘れられない。
 今でもきっと生きていると思うんだが、多分、俺はずっとその女とは別れたままなんだと思う。そう思うと切ない気もするが、この気持ちは恐らくずっと覚えているに違いない。

 その女の夢を見て目が覚めた朝、泣きたくなるんだ。不思議と。

 サンライオは、そんな記憶を揺り起こす大事件があった国だった。辿り着くまではその――またまた船が難破して、散々泳ぐ羽目になったんだが。ついでに言うと当初の目的地はサンライオではなくロギオンだった。確かに俺はロギオン行きの船に乗ったのに――っ!

 このジンクスは後々ずっと付いてまわることになる。もういいっちゅーねん、と思うくらい、船に乗れば必ずその船が難破する、というジンクス。陸で歩けばいつの間にか迷うし、一体どうなってるんだ、と、自分自身の運の悪さと言うかその辺が憎たらしい。

 話が逸れた。それはともかくとして、だ。

 ジャピトスでの話を、どこかでしたことがあるんだが、どーにも、旅先で出会う初対面な人に「はじめまして」って言うのに妙な違和感を感じることがあったんだな、コレが。
 その時の原因が分かった時の話。 

 その頃の俺は、よく妙な夢を見るようになっていた。さっき言った女の夢も含めて――なんだろう、まるで行ったことの無い場所に行ったことのあるような、会ったことの無い人に会ったことがあるような、そんな、実感のある夢。

 俺はこの通り、聖職者でも無いのに首にクロスを掛けている。目が覚めたときから何故か持ってるんだが、これ、実は昔、ネウガードで燃え尽きて死んだ坊さんのモノと同じらしいのよね。
 何故分かったかと言うとここでの出来事。おっかないバードマンの人がさ、今にも斬りかからんばかりの雰囲気で言うんだよ、俺に。それをどこで手に入れたとか何とか。

 俺はびっくりしたね。みんなに行っても気狂い扱いされるかもしれないけどさ、このクロス、いつもちっちゃな音が鳴ってるのよ、ずーっとずーっと。普段は気にも掛からない程度の小さな音なんだが、この時はもうリンリンうるさいくらいに鳴ってたワケ。
 そのバードマンの人が現れたのは、その音がもう我慢なんネ! って思ったちょうどその時だったのよね。ちょうどその兄ちゃんは3人組で、一緒に何だか顔色の悪い闇エルフのお姉ちゃんと、全身包帯だらけのミイラみたいな占い師が一緒だった。

 そこで、俺は、自分が誰の記憶を持ってるのか、ってことを知ったのさ。知ってるだけで、まあその、あんまり感情移入できる類の記憶じゃないんだがな。何だかドロドロしてるし、しょーもないことでやたらと悩んでるしさ。でもまあ、女の趣味だけは良かったかなって、そこだけは褒めてやりたい、そんな記憶なんだが。

 と、話が逸れたな。誰の記憶だったかって? いや、知ってるかなぁ。世界中回ったけど、あんまり良い話聞かない類の人間だぜ? もうとっとと忘れられてるとは思うが――。

 じゃ、続きは明日だ。今日はこの辺にしとく。
 すまないな。大した続きがあるわけじゃないんだが、そろそろ俺が眠い。
 何言うか分からんからな、これ以上酔っ払うと。ごめんよ。



 


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