クロスロード IN サンライオ(後編)
昨日、どこまでしゃべったっけ? えーと、そうか。そうそう、誰かの記憶を俺が持ってることを知った、って話だったっけ?。そうそう、確かそうだった。
そう言えば、この国は国王の人が面白い人だったな。肉体派なのか文系なのかいまいちよくわからなかったが、受けの広い人だった。見てて楽しかったのを覚えてるよ。
なんかね、この国の国王は代々、世に言う萌えキャラなのかね。歴史書を見る限り、昔々はそうでもなかったみたいなのに。何でなのかねえ。
え、前置きはもう良いって? わかったわかった。そう急かすなよ。俺、続き言うの、ちょっとやだなーって思ってんのよね、実は。これ、言ったら多分お前等引くと思うしさ。昨日も言ったが、あんまり良い評判の人物じゃないのよ。
――言いかけで止めるのは卑怯? ああ、全く以ってお説、ごもっとも。じゃあ、仕方ないな、言うぞ。
その人物の名前は、ヴィグリード=アースグリムって言う。アース教会ってのが昔あったろ? ほら、アレの司教様だった人だ。ネウガードに突っ込んで燃え尽きて戦死したとかゆー。知ってる?
――あー、今いきなり引いたな? そうそう、だからちょっと言うの嫌だったんだよ。アイツは酷いヤツだった? そうだなぁ。いつも言ってることとやってることの差異に自分自身で悩んでるヤツだったからなぁ。酷いっちゃ酷いヤツだったと俺も思うね。敵だと認識した人間に叩きつける言葉は容赦無いし。見てる方が痛いっつーのって感じでな。
ちょっと引いた人に言っとくが、俺は別に、アイツの記憶を持ってるだけで、感情も人格も肉体も全く別の人間だ。思想的にアース教だの何だのを引きづってるわけじゃないし、アイツの交友関係を引きづってるつもりも無い。俺は俺だけの人生を生きている。
この時に出会った3人にもそう言ったさ。向こうも俺が、ソイツの記憶を持ってるだけの別人、ってきっちり認識してくれたしな。今度もしどこかで逢うことがあっても、きっと「一度会っただけの人」か、綺麗さっぱり忘れられてるさ。それで良いと思うし、その方が色々楽しみがあると思うぞ。
旅ってのはやっぱ、行く先々で出会う人とどういう関係を結べるか、ってのが楽しみのひとつだろうしな。
この3人との出会いをきっかけに、俺の中の何かの歯車が回り始めたんだって思う。その日までちょっとずつしか思い出すことの無かった記憶が徐々に徐々に、頭の中に染み込んで来るようになったからさ。
昔のことについて? ああ、また話すこともあるだろう。旅先で、俺はこうして話をするのが好きなんでな。またどこかで会った時に。
最初に言ったろ? 「出会いは、別れの始まり」だってな。
でもな、実はこう後に続けた人が居るんだ。
「そして、別れは次の出会いを運んでくる」――昔に死んだ、ある司教様の言葉だとさ。俺は記憶に無いが、旅先で聞いた話さ。
すまんが、今日もまたこの辺で。
最近、前世のことを思い出すと頭が疼きやがるんだ。